勝つことにこだわる父親
ではまずは一例として、
とあるご夫婦の話を夫目線でご紹介します。
自分の思いに固執する家族が一人でも居るだけで、
心のそこから家族を思いやり、気遣っている人がどれだけ苦しみを被ってしまうのか、理解して頂けるかと思います。
とにかく勝つことにこだわってしまうと・・・?
最近娘の様子がおかしい。
激しく苛立っていることもあれば、頑なな態度も見受けられる。
勉強の成績に至っては目も当てられない。
年頃の娘にはよくあることなのだろうと、妻と良く話してはいるのだが、
私の娘の場合は、特にそれが尋常ではないように思えてきている。
大事な一人娘なこともあって、とても心配だ・・・。
「なんとかしたい」
そう思い、これまで色々と手を尽くしてきた。
妻は、「プレッシャーに押しつぶされたのが原因」だと、度々オレに言っている。
しかし、問題はそんなに単純ではないのが俺の答えだ。
妻は何も分かっていない。
俺がどれほど娘の将来を案じているかお前には分からないだろう。
子供の幸せを本気で考えるのなら、
解決策が見つかるまで手を尽くすのが親なんじゃないのか?
先日、娘が”B”と記された成績表を持って帰ってきた。
娘はしかも、その結果の心配のあまり、「私は学習障害ではないか」と教師に連絡したとも言う。
オレは念のため、娘に検査を受けさせるべきだと教師に訴えた。
しかし、教師はそれを拒んだ。
「娘さんはうまくやっています。他のクラスメートとさほど変わらない、普通の子ですよ」と。
ふざけるな。
オレが娘を気に病んでいるのは、娘の幸せを常に願っているからで、それを妨げるものは取り除いておきたいからなんだ。
もうこの教師は信用できない。
娘を転校させるしかない。
この決意を妻に打ち明けると、妻は激しく反対した。
だが、オレの決意は固い。
自分たちに残された選択は、学校を変えて無関心な教師から娘を引き離すことだ。
新しい学校なら、両親の意見や心配事にも耳を傾けてくれるはずだから。
しかしいざ転校しても、成績は上がらなかった。
そして何故か、娘の反抗的な態度もぶりかえされ、今度は些細なことでイライラするようになっていった。
特に、私と一緒にいるときが特にひどい気がする。
何か手を打たねば・・・。
私は評判の高い、とある精神科クリニックに相談することに決めた。
娘と両親みんなで来るように言われた。
娘の為ならば父親の私は、なんだってやってやる。
カウンセラーの先生が言うには、
「娘さんは自分をひどく追い詰めている」
「娘さんの怒りは、特に期待ばかり押し付けるお父さんに向けられている」
とのことだった。
・・・話にならん!
カウンセラーの話は間違っている。
オレが間違っているワケないだろう。
おそらくアイツは心理学オタクなんだ。
悪気はないだろうが、娘のことは分かっていない。
少なくとも、オレのように娘のことは理解していないのだ。
翌日、オレはようやく問題の解決策を思いついた。
まずは最新のコンピューターと学習ソフトを買い込んだことを二人に告げた。
これなら毎日娘と家で二人きりで勉強できるし、そうなれば成績も上がるはずだ。
クリニックに通う費用を無くせば、学習ソフトの代金に回せる。
クリニックの先生が指摘していたが、もしも万が一に娘がオレに怒りを感じているのなら、
親密な時間を毎日過ごすことで、その問題も解決に向かうはずだ。
「これでようやく昔の娘を取り戻せる。
やはり結局、娘のことを一番考えているのは父親である私なんだな。」
さて、いかがでしょうか?
次回はこの父親の本心と、そして家族にもたらしている悪影響を書いています。
ご興味あれば、続きをご覧頂ければと思います。