身近にある相手を説得するテクニック 「返報性のルール」

 

 

返報性のルールを学ぶ

 

返報性のルールとは

他人が自分に何らかの恩恵を施してくれた際は、自分も何か似たような形でそのお返しをしなければならないことを言います。

 

例えば・・・

あまり親しくない人から誕生日プレゼントをもらったところを想像してみてください。
その場合、「今度は自分がその人に何かプレゼントをしなくては・・・」という衝動に駆られてしまうのです。
当然相手の誕生日を知らなかった場合でも、その人の誕生日を調べて覚えておかなければならなくなるでしょう。

 

ですので返報性のルールは、
私たちの身の回りにある、簡単で強力な武器の1つに数えられます。

しかし、
こうした恩義の感覚を伴う返報性のルールは社会に広く行き渡っており、
そして「人間社会を生き抜くうえで必要不可欠である」と言われているほどです。

 

返報性のルールの誕生するまで・・・

「受けた恩義には、将来必ず報いなければならない」
返報性のルールはそんな義務感から生まれます。

ただし、その期間は永遠ではありません。
恩義が比較的小さいものである場合、それは時間の経過と共に報恩の義務は薄れていきます。
しかし贈り物が大変素晴らしく、記憶に残るようなものであった場合、義務は長い間生き続けてしまうでしょう。

 

例えば・・・

普段は不快な印象をもっているセールス勧誘員、
何を考えているか分からない知り合い、
評判が良くない組織団体の人・・・。

そんな彼らですが、もしも彼らが要求を出す前に、
“アメを渡したり”、”子供にぬいぐるみを渡したり”といった、ちょっとした親切を彼らからされただけで、要求を引き受けてしまう確率がぐっと上がってしまうのです。

つまり、
お客さんにちょっとしたプレゼントをするだけで、
売れる見込みのなかった商品やサービスを彼らは売ることができるというワケなんです。

 

それでも私たち人間は、「返報性のルールに従って行動するように」と教えられてきています。
そしてもしもこのルールを守らなかった場合、社会的制裁を受けることも私たちは知っているはず。

 

社会的制裁とは・・・

他人から取れるだけ取ってもなおそのお返しをしようとしなければ、あなたに対してほとんどの人が疑いの目を向けることになります。

そんな、「あなたはたかり屋だ」とか「この恩知らず!」というレッテルを貼られるのだけは避けなければなりません。
だから私たちは努力をするのでしょう。

そして時には不公平な要求であっても、それに甘んじてしまうのが私達と言えます。

 

 

その為、返報性のルールを用いると、
「普通」は断ってしまいそうな要求でも、
「相手に借りがある」という恩義は、受け入れさせようとする。
ここの普通というものを軽く圧倒してしまうのです。

 

参考

なので私達は、

「相手に借りがある」という気持ちがあると、普通は断るような要求でさえ、簡単に受け入れてしまうようになってしまいます。

 

ただ厄介なのは、そうした努力の過程の中で、
「恩義を感じさせることによって悪企みをしよう」と考えている相手に、まんまと騙されてしまうこと。

それだけ、返報性のルールの威力は恐ろしいものだと分かります。

 

ではここで、返報性のルールを利用した例を見てみましょう。

 

返報性のルールが利用された例1

とある団体が、町行く通行人から寄付を求めました。
そこで、まず彼らは何も知らない通行人に花を渡すようにしたのです。
(最も安上がりで効果的だったのが花だったとのこと)

突然花を手に押し付けられたり、強引に上着とかに花をピンで留められたり・・・。
そして「こんな花はいりません」と通行人がどれだけ訴えても、
「いえいえ。これは私たちからのプレゼントですから」と寄付団体は言い、返されることを拒むのです。

このように彼らは、返報性のルールを無理やり持ち込み、その上で寄付を求めます。

「相手が施しを求める前に施しをしてしまう」
この戦略は恐ろしいほど成功したと言われています。

しかし、返報性のルールの効力は徐々に失われていくことになりました。
そう、この話には続きがあるのです。
それは、
一度その手口に引っかかった人々が、その寄付団体の服をまとった募金勧誘者を警戒するように呼びかけたのです。

つまり、人々は「プレゼント攻撃」を撃退する準備を整えました。

結局その団体は厳しい財政難に陥り、
その結果、経済的な理由から閉鎖したとのことです。

 

返報性のルールが利用された例2

昔とある地域の宗教団体のリーダーだった人が、地域に住む住民に集団自殺を呼びかけました。
それに応え、ほとんどの人々が毒を飲んで死んでしまったのです。

しかし、一人の住民だけは違いました。
その住民はリーダーの命令を拒み、その地域から逃げ出したのです。

後にその住民が話すのは、
「私があのとき冷静に判断できたのは、どんなに困っているときでもリーダーからの恩恵を受けることを拒否していたから」だと語っています。

その団体のリーダーは、その住民にある聖書を渡していました。
その聖書にはこう書かれていたそうです。

「賄賂は決して受け取ってはならない。
賄賂は目のあいている者の目を見えなくし、本来は正しい人の言い分を歪めてしまうのだ」
と。
皮肉な事に、この住民はこの教えを守っていたのです。

彼は言います。
「1度でも彼から恩恵を受けてしまったら、完全に服従せざるを得なくなる。」

だから、彼に借りを作りたくはなかったのだと。

 

いかがでしょうか?
では最後にまとめです。

返報性のルールのまとめ

  • 返報性のルールとは、「相手がしてくれた親切を相手に返すべきだ」というもの。
  • 例え受け取ったものが自分が頼んだものでなくても、私たちはお返しの義務を感じてしまう。それが余計なお世話であったとしても・・・。