小さなコミットメントだとしても、うまく使えば、
善良な市民を「奉仕者」に、
見込み客を「顧客」にも変えることができてしまう。
相手をどうしても自分の協力者にしたいのなら、
ほんの些細な依頼を引き受けてもらうことから始めてみると、うまく行くのかもしれません。
そもそも人の本当の感情や信念は、言葉ではなく行動にあらわれるとされています。
なので私たちは多くの場合、相手がどのような人なのか判断するときには、その人の行動をよく見るはずです。
逆に私達自身も、自分がどのような人間であるか判断する場合、
「これが自分だ!」という証拠と、自分の行動を見て判断しています。
自分の信念だったり、
自分の価値だったり、
自分の態度だったり・・・。
どれもこれも全て、主な情報源は自分の行動なんですよね。
例えば・・・
もしもあなたがボランティア団体の人から署名を頼まれたときに、軽い気持ちでそれに記入してしまうと、後日呼ばれたときに参加を引き受けやすくなってしまいます。
そして参加した場合、その参加理由を自分自身の価値観、好み、性格などと関連付けて説明してしまう傾向があるのです。
コミットメントは、人が自己イメージを形成する為に使う情報を提供し、その自己イメージは自分自身の将来の行動を決めるものです。
そしてその行動は、新しくできた自己イメージを更に強固なものにするでしょう。
まずは一度、例を見てみましょう。
例
戦争中、ある国が敵国の捕虜を従わせる為に利用したコミットメントがあります。
その理由は、仮に捕虜が自分たちの意見に口頭で同意したとしても、まだ安心できないからです。
まずは捕虜に、自主的に捕虜を捕らえた自分たちが望んでいる内容の文章を捕虜に書かせるように促しました。
もしもそれを捕虜が拒否した場合。
そのときは、予め用意しておいた自分たちが望んでいる文章を、捕虜にただ書き写しさせたのです。
捕虜にとっては、おそらくそれが「害の無い譲歩」に思えたに違いないでしょうから、特に怪しむことなく行ったのでしょう。
ほんの些細なことに思えるコミットメントが、更なる行動を生み出すのは既に述べた通り。
ですがこのように、
意見を書かせるコミットメントは非常に厄介です
書いてしまうと厄介になる2つの理由
①その行動をとったという証拠が残ってしまうから。
口頭とは異なり、その行動を忘れたり取り消したりすることなんかできないですよね。
つまり記録された行動のせいで、やってしまったことと一貫性を保たなければならなくなってしまうのです。
その為、自分の信念や自己イメージを変えざるを得なくなってしまう。
②記録として残ってしまうから
文章となった意見は、もちろん他の人々に見せることができる。
書いてしまった本人が後でいくら拒否しても、その文章は確実に彼らを書かれた意見の方向へ導こうとする。
そしてその文章を見た人間は、この意見を心底信じてしまう。
知っておきたい
もしも何らかの意見が書かれた文章を第三者が見てしまうと、
「これは書いた人の本心を映しているに違いない」と思ってしまうのが人間なんです。
その為、誰かに意見を書かせて記録に残すと、それを書いた本人はその内容と一貫した行動を取らざるを得なくなる。
要するに、
意見を文章化させることがあると、その文章と一貫した人間に見られたいばかりに、その立場を維持しようとする強い気持ちが生まれます。
一貫性がない人は、
「気まぐれ」「優柔不断」「軽はずみ」な人だと判断されてしまう
一貫性がある人は、
「確かな」「信頼のおける」「健全な」人だと判断される
こうした点を考えていけば、人々が他者から「一貫していない」と見られるのを避けたがるのも当然ですよね。
今回の要点
自分の意見が広く知れ渡っていればいるほど、自分の格好ばかり気にするようになり、意見を変えにくくなってしまう
ということなんです。
とはいえ、
この人間の傾向って上手く有効活用できないこともないんですよね。
☆参考☆
例えば、
ダイエットを決意し、目標の減量数値まで到達させたいのなら、その目標をできるだけ多くの友人、親類、隣人に見せるようにするといいでしょう。
「今度こそはダイエットしてモテモテになるんや!」と、
その決意表明として、ダイエットサポートを専門とするクリニックにお金を払い、一貫性を保とうとする必要などないのです。
それでは最後に、それらをうまく利用した例を2つご紹介しましょう。
例1
「禁煙したい!」ときは・・・
- 人生において自身が「この人から失望されたくない!」と思う人達をリストアップする
- リストアップしたら名刺サイズのカードを用意し、1枚1枚に「タバコはもう吸わないことを誓います」などと書く
- カードを全員に速やかに渡す
タバコを吸いそうになったとき、「カードを渡した人たちからどれだけ軽蔑されるだろうか?」などと考えるでしょう。
だって、もしもそこで踏みとどまれなかったら・・・!
例2
とあるレストランの話で、お店は問題を1つ抱えていました。
それは、
予約をしたお客様が、当日になってもお店に現れないことです。
特にこのレストランは、その問題の割合が多かったとのこと。
そこでそこの経営者がとった行動とは・・・?
予約の受け付け方の変更
- 予約を受け付けている従業員に、「予約に変更がありましたらご連絡下さい」と言うことをやめるように促す
- その代わりに、「予定に変更があったらご連絡頂けますか?」と相手に尋ね、答えを出させるようにした。
ここのポイントは、
相手に約束を取り付ける質問をすることです。
それにより、お客さんはそれに従った行動を取る可能性が高くなるんですね。